くじら餅

ふるさとに 母はすこやか くじら餅        雄山

みちのく、山形を代表する伝統名菓「くじら餅」は、江戸時代より、新庄・最上地方で、ひなまつりのごちそうとして各家庭で作られてきました。作り方は、今も昔もほとんど変わりません。餅米とうるち米を粉にしたものに砂糖を加えて蒸し上げる、という大変素朴な餅菓子です。味付けに、しょう油やみそを加えたり、また、くるみやごま、あずきで彩りを添えて各家庭の味を出したりする、母から子へ、子から孫へと伝えられてきた、民間伝承の自然の味そのままのお菓子です。だからこそ、故郷を離れたどの世代の人にとっても、また、地元の人々にとっても、なつかしの味、と呼ばれるのでしょう。

くじら餅にくじらは入っていないのです

「くじら餅」という名前を聞いた多くの方に「くじらの肉が入ったお菓子なの?」と聞かれるのですが、くじらの肉は入っていないのです。では、なぜ「くじら餅」という名前なのか。これには諸説がございます。

まず、「くじら餅」という名称が初めて文献に見られるのが、今から350年前、17世紀末に遡ります。天和3年(1683)の料理書に、おやつ(点心)として「ういろう」と「くじら餅」の名前が載っています。当時の「くじら餅」は表面が黒く、その下に白い餅、という二色の層になっており、その見た目が、くじらの切り身に似ていたため、「くじら餅」の名前がついたのではないかと伝えられております。

また、地元に伝わる説では、昔の「くじら餅」は一升一本と言われ、重さが2キロ以上もある巨大なものでした。その大きさに驚いて「くじらみたいなでっかい餅だ」ということで、「くじら餅」の名がついたという説です。ほかにも、方言から転化したという説。冷害や干ばつなどで凶作が続いた頃に、殿様の発案で、くず米を粉にしてみそで味をつけ、くるみを混ぜて蒸し、代用食として作ったものなので、「くず餅」から「くずら餅」それがさらに訛って「くじら餅」になったという説です。「久持良餅」という漢字をあてる説もあります。お餅ですから、かたくなりますが、少しづつ切って食べれば、たいへん日持ちの良い食べ物です。ですから、「久しく持つ良い餅」ということで「久持良」の名がついた、というわけです。

いずれにしても、「くじら餅」が名前をもらった「鯨」は日本の食文化の歴史と深く関わる大切な食品です。海から遠く、山にかこまれた新庄・最上地方では、塩漬けのくじら肉が、重要なたんぱく源だった時代もありました。本家の「くじら」を巡っては、いろいろな意見があると思います。しかし「くじら」の名のついたお菓子が何百年という時を経て、現在に残り、そしてこれからも残っていくことは、大げさではありますが、日本の食文化を伝える一例として、ずっと語られるべきものだと思います。

くじらもちのサムネール画像

ひなまつりは4月3日?

地元の人間にとっては、「くじら餅」はひなまつりのごちそうです。おひなさまを飾り、ひなあられやひな菓子、そして「くじら餅」を御供えするのです。お祝いの行事に餅は欠かせませんが、女の子のすくすくとした成長を願う家族の気持ちが、「くじら餅」にたくされているのです。さて、新庄・最上地方では、ひなまつりは一ヶ月遅れの4月3日に行われます。慣習として、旧暦で桃の節句をお祝いするのですが、3月初旬ではまだ雪がたくさん残っていたり、まだ花が咲かなかったりと、諸事不都合があったのでしょう。

しかし、昨今の気候変動のせいでしょうか、近年は確実に雪の量が減っている気がします。ですから、昔は4月3日にあわせておひなさまを飾ったものでしたが、最近では3月3日にあわせて飾り、旧暦の4月3日まで飾っておく家庭も増えました。時代の変化と気候の変化が、今後この地方のひなまつりの風習にどんな変化をもたらすのでしょうか。

くじら餅の食べ方

「くじら餅」は、やわらかいうちはそのまま召し上がっていただけますが、かたくなった場合は、焼いて食べていただくお菓子です。昔は、囲炉裏や火鉢など、冬の間は火が身近にある暮らしが一般的でしたから、囲炉裏端に座ったおばあさんが、くじら餅を焼いて、孫に食べさせる光景は、どの家庭でも見られたものでした。

くじらもちパッケージ

たかはしの「くじら餅」は、昔ながらの製法をまもり、添加物・保存料などは一切使用しておりません。地元産の米、みそ、しょう油を使った、環境にやさしい食品です。ただ、原料にうるち米を使用しておりますので、日がたてば必ずかたくなってしまいます。

かたくなりましたら、お手数ですが、ひとくち大に切り冷蔵庫や冷凍庫で保存していただくことをお勧めします。お召し上がりいただく際は、オーブントースター、ホットプレート、フライパンなどで軽く焼いて独特の風味をお楽しみ下さい。電子レンジは、機種によって設定時間が異なりますが、15-20秒くらいが適当かと存じます。甘いお餅ですから、鍋で煮ると溶けやすくなりますので、煮るのはお勧めできません。

「ひとくちくじら餅」は、透明フィルムのまま鍋で茹でていただきますと、またやわらかくなります。焼く場合は、フィルムから出し、保存剤をはずしてから調理して下さいますよう、お願いいたします。



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