新庄・最上あれこれ

「鯨」といえば、成田三樹夫でしょうか。

成田三樹夫といえば、1990年にこの世を去りましたが、今も名優の余韻は増すばかり。一度観たら、記憶にとどまり続ける役者です。酒田出身の秀才として山形県の誇りでもあります。

彼は役者業のかたわら、俳句にいそしむ一面がありました。1991年に無明舎出版より刊行された遺稿句集のタイトルが「鯨の目」です。反骨で照れ屋で哲学者、人柄が偲ばれます。時に王維のごとく、時に山頭火のごとく味わい深い句集です。平野甲賀の装丁です。

タイトルにもなった「鯨」を詠んだ句が何作かありますが、ここでは「餅」ということで一句紹介したいです。

   肉までもぬいだ寒さで餅をくい  成田三樹夫

暖房が不十分な昔、寒い地方で、「餅」という祝いの食べ物を食べる情景が浮かんできます。そうまでしても喰らうのが「餅」である、と。雪国に生まれ育って餅を食べる、嬉しいような寒いような昭和の日々がぐわっと迫ってきて思わず唸ります。

興味のある方はぜひ句集をご覧ください。秋田の無明舎出版から出ています。

松本清張ファンでなくても「点と線」という推理小説のタイトルを聞いた方は多いと思います。実はこの中にわが町「新庄」が登場するのをご存知でしょうか。推理小説ですので、詳しくは申しません。もったいぶるようですが。

「点と線」の発端となる舞台は九州に譲りましたが、清張が時刻表を眺めつつ、ふと「陸羽西線、新庄」という駅名に目をとめ、しばし東北の町で起こる事件やトリックを構想したのでは、と推理いたします。

 

新庄の方言のお話です。

地元の人は当たり前に使っていても、なかなか県外の人に伝わらない言葉、いろいろとありますよね。方言には、標準語ではとても表現しきれない豊かなものが秘められています。土地の生活習慣や歴史をすべて包み込んで、ずっと伝えられてきたような、地元の文化遺産ともいうべき輝きがあります。

さて、その日の仕事も終わり、夕御飯もおいしく頂き、テレビでも見るか、となった新庄のとある家庭の会話です。

「今日の8時に水戸黄門来るよにゃあ?」

「あー、水戸黄門来んな今日だったっけがや?」

「んだべ、今日だべ」

わが町、新庄にまつわる話題、伝説などを紹介してみました。ご一読くださいませ。

ヤマトタケル
 当舗の「あんくじら餅」の包み紙に使用している写真は、市内の本合海(もとあいかい)にある八向楯(やむきだて)と呼ばれる名勝です。最上川沿いの絶壁に矢向(やむき)大明神があり、その周辺の絶景は八向楯と呼ばれる景勝地となっております。

最近話題になったのは、大明神の上の岩肌に人の顔らしきものが浮かび上がったことです。大明神に祀られているのは、ヤマトタケルと伝えられています。岩肌の顔は、どことなく古代の人のような面立ちにも見えるのですが・・・。2009年は神社の神階授位1135年祭が行われ、女人禁制が初めて解除になる行事もありました。はてさて、岩肌に現れたのはヤマトタケルなのでしょうか?

義経と弁慶
 名勝八向楯の対岸に、義経・弁慶下船の地の記念碑があります。兄・源頼朝の追手を逃れて平泉に向かう途中の義経主従が、酒田より最上川を遡って、新庄・本合海で船を下り、ここからは陸路で、亀割峠を越え、瀬見を経て、平泉へと逃れていったと伝えられております。

  さて、"新庄の奥座敷"と言われる瀬見温泉ですが、義経・弁慶にまつわる数々の伝説があるのをご存知でしょうか。そもそも瀬見温泉の由来は、義経の子、亀若丸の誕生と共にあります。義経一行に同行した北の方が、亀割峠を越えたところでお産をし、生まれた赤ん坊に産湯を使わせようと、弁慶が谷川を下ってみると、川辺に湯煙が立っていたのです。「せみ王丸」という銘のなぎなたで岩を一突き、なんとそこから温泉が湧き出てきた、という逸話が残っており、そのなぎなたの銘より「せみ温泉」の名がついたと言われております。

ところで、亀若丸は産声をあげない赤子でした。自分が大きな産声をあげれば、追手に父の居場所を教えてしまう。赤子ながら、父が追われる身であることを悟っていたのだ、と言う説があります。そんな赤子が、初めて産声をあげたのが、「子が鳴く」という字をあてた、現在の鳴子と伝えられております。

余談になりますが、八向楯の対岸、義経・弁慶の碑と並んで、当舗店主の句碑がございます。店主は長年にわたり俳句を趣味としておりますが、数年前に詠んだ句、「でで虫や万の渦のむ最上川」で、NHK山形主催の最上川俳句コンクールの賞をいただきました。地元八向の方々の多大なる尽力もあり、句碑の建立という生涯の誉れを頂くことができました。もちろんメインの句碑は、俳句界の新星、黛まどか氏の碑「草の香に一舟もやふ最上川」です。最上川沿いをドライブする機会があれば是非、お立ち寄り下さい。近くには子授けにご利益のある八幡神社もあります。