鯨といえば

「鯨」といえば、成田三樹夫でしょうか。

成田三樹夫といえば、1990年にこの世を去りましたが、今も名優の余韻は増すばかり。一度観たら、記憶にとどまり続ける役者です。酒田出身の秀才として山形県の誇りでもあります。

彼は役者業のかたわら、俳句にいそしむ一面がありました。1991年に無明舎出版より刊行された遺稿句集のタイトルが「鯨の目」です。反骨で照れ屋で哲学者、人柄が偲ばれます。時に王維のごとく、時に山頭火のごとく味わい深い句集です。平野甲賀の装丁です。

タイトルにもなった「鯨」を詠んだ句が何作かありますが、ここでは「餅」ということで一句紹介したいです。

   肉までもぬいだ寒さで餅をくい  成田三樹夫

暖房が不十分な昔、寒い地方で、「餅」という祝いの食べ物を食べる情景が浮かんできます。そうまでしても喰らうのが「餅」である、と。雪国に生まれ育って餅を食べる、嬉しいような寒いような昭和の日々がぐわっと迫ってきて思わず唸ります。

興味のある方はぜひ句集をご覧ください。秋田の無明舎出版から出ています。